SAPTオンラインスクール 特論講座
[講義題目]: GNSS(GPS) の理解に必要な特殊および一般相対性理論の基礎から実践まで
[日時]: 2021年9月7日(火), 8日(水) 13:00~17:00
[会場]: 測位技術振興会(SAPT)ビデオ会議室 A
[講師]: 大阪大学 核物理研究所 福山 武志 氏
[予備知識]: 理工系大学で学ぶ初等的な物理の知識
[講義概要]: なぜ GPS によって自分の位置が精度よくわかるのか、その仕組みをブラックボックスなしに理解すると言うのがこの講義の目的である。
そのためにまず GPS 人工衛星の非相対論的な運動(ケプラー運動)を復習する。GPS では、衛星内の時計と地上の受信体の時計との精度の
高い時間合わせが必要になる。
同一の場所では正確に同期した2つの時計でも、互いに運動する慣性系に分けて載せられると、(その相対速度に依存する)時間のずれを生ずる。
これが特殊相対論の効果である。 また、人工衛星と地上の受信体は、異なる重力場の影響下にあり、これによっても(地球からの距離に依存する)
時間のずれが生じる。これが一般相対論的効果である。
実際の人工衛星は、楕円軌道を周回しており、地球からの距離も、速度も時々刻々変化する。その効果を取り込んで初めて GPS が機能する。
その仕組みを、受講者達が納得できるまで説明したい。
[講義内容]: 1. 1.1 GPS の原理
1.2 人工衛星の軌道の計算 万有引力のもとで、人工衛星は楕円軌道を描く。
2. 特殊相対論的効果
軌道の形そのものには、相対論的補正は近日点の移動として効いてくるが、それは、ここでは無視できるほど小さいし、前もって
取り込んでおくことも可能である。
衛星と地上の受信機は、(近似的に)互いに運動する別の慣性系に載っている。その場合、時計の進みが異なるのでそれを考慮する
必要がある。
これが特殊相対論的効果である。 速度$v$で動く慣性系の時計は、静止系の時計に比して相対的に$\frac{\delta t}{t}=-\frac{v^2}{2c^2}$だけ遅れることを示す。
ここで$v$は光速度である。
3. 一般相対論的効果
衛星と地上の受信体は、それぞれ異なる重力場の影響下にあり、そのことによる時間の遅れも考慮する必要がある。
地球中心から距離$r$にある時計の相対的な遅れは$\frac{\delta t}{t}=-\frac{GM_\oplus}{r}$ であることを示す。
ここで$G,~M_\oplus$は、それぞれニュートン常数と地球の質量である。
4. 実際の軌道への補正
実際の軌道は、楕円軌道のため、衛星の距離$r$も速度$v$も時々刻々変わるため、そのことを考慮した補正が必要である。
すなわち衛星が離心近点角$E$にある時の衛星の時計のずれは、$$\Delta t_v+\Delta t_p=2\Delta t_v=-2\frac{1}{c^2}\sqrt{GM_\oplus a}e\sin E \nonumber
\label{IS}$$
であることを示す。ここで$a,e$は、それぞれ、楕円の長半径、離心率である。
[補足]: 講義は前もって詳しい講義ノートをお渡しし、講義の時にも演習や質疑応答の時間をとりますので、
前もって自分にとって不明な点を整理して、講師に随時、分かるまで質問をしてください。
また講義後、2021年8月12日(木)まで、e-mail あるいは zoom で質問に応じます。
[受講料]: 特論講座(半日 2回) ¥20,000(会員), ¥25,000(非会員),¥10,000(学生)
本講義は、受講者総数(学生の方は0.5名に換算)が3名に満たない場合は、原則として閉講いたします。