SAPTオンラインスクール 基礎講座 22-B1
[主催]: 測位技術振興会 [協賛]: システム制御情報学会
[講義題目]:「分かる! カルマンフィルタ!
-確率統計・推定論から非線形フィルタと宇宙応用まで-」
[日時]: (Lec-1) 2022年6月 8日(水)9:00~17:30
(Lec-2) 2022年6月15日(水)9:00~12:30
(Lec-3) 2022年6月22日(水)9:00~12:30
[会場]: 測位技術振興会(SAPT)ビデオ会議室 A
[講師]: 立命館大学 名誉教授 杉本 末雄 氏
[略歴] 1974年6月Polytechnic Institute of New York(現 New York University) Ph.D
専門分野:確率システム制御工学,信号・画像処理とその応用
近刊(村田眞哉・大西勝巳氏と共編著): Nonlinear Filters (2021年, オーム社)
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 村田 眞哉 氏
[略歴] 2007年3月に修士号(早稲田大学)を取得後、NTTの研究所に入社し、情報分野の研究開発に従事
その後、2017年4月にJAXAに入社し、現在、宇宙航法や測位衛星システムの研究開発に従事
その間、アールト大学客員研究員(2021年10月~2022年3月)、テキサス大学オースティン校客員研究員(2022年4月~)
専門はフィルタとその応用、特にGPSを用いた人工衛星や宇宙機の航法
Ph.D.(情報理工学、東京大学)
[受講者予備知識]:理工系大学,高専等で学ぶ初等的な線形代数と確率統計の知識
[講義概要]: カルマンフィルタは,観測信号から雑音成分を取り除き,観測信号に含まれているシステムの状態を推定するための
最も有効な手法です.統計学的制御工学・信号処理,GNSS測位での位置の推定法としては必須の手法です.
本講義では,カルマンフィルタを完全に理解,納得するために,史上,最も簡潔な方法でカルマンフィルタを導出します.
そのために,まず確率統計の基礎を学ぶと共に,同時に,工学や社会科学全般で有効な線形回帰モデルに対する推定論
についても分かりやすく講義いたします.
カルマンフィルタは簡単な問題にしか適用できないため,応用上重要になるのは非線形フィルタと呼ばれるカルマンフィルタの
拡張になります。
本講座では拡張カルマンフィルタ(extended Kalman filter)やunscented Kalman filter、そして
アンサンブルカルマンフィルタ(ensemble Kalman filter)等の粒子を用いたフィルタについて解説いたします.
フィルタの応用例として現在、米国のGPSを使用して、地球を周回する人工衛星の軌道や速度が、衛星搭載のコンピュータによって
瞬時に決められています。非線形フィルタを用いた宇宙航法と呼ばれる技術です。
また本分野の最新動向として、GPSを使用して月に向かう宇宙船の位置や速度を決定する技術や、月の周回軌道上にGPSの様な
測位衛星システムを構築する議論が進められています。
本講座ではフィルタや各技術の解説に加え、日本を含めた各国の月探査計画についても紹介します。
[講義内容]: (Lec-1) 2022年6月8日(水)9:00~17:30
1-1. 確率統計の基礎
(1) 確率とは
a. 確率の公理
b. 確率変数,確率密度関数(pdf),累積(確率)分布関数(cdf)
c. 期待値とモーメント生成関数
d. 2項分布と正規分布
(2) 結合確率密度関数(jpdf)とn次元正規分布
a. 平均値ベクトルと共分散行列
b. n次元正規分布
(3) 条件付き確率と条件付き確率密度関数とベイズの定理
1-2. 推定論
(1) 最尤推定法と最小二乗法
(2) 線形回帰モデルのパラメータ推定
(3) 推定パラメータの誤差共分散
1-3. カルマンフィルタ
(1) 観測式(線形回帰モデル)と状態空間モデル
(2) カルマンフィルタの最も簡単な導出法
a. 条件付確率とベイズの定理
b. 時間更新式と観測値更新式の導出
1-4. 質疑応答
(Lec-2) 2022年6月15日(水)9:00~12:30
1-1. カルマンフィルタから粒子フィルタ
(1) フィルタとは
a. 確率変数と確率過程
b. 状態空間モデルとフィルタの設計
c. カルマンフィルタ(Kalman filter, KF)
d. 拡張カルマンフィルタ(extended Kalman filter, EKF)
e. Unscented Kalman filter (UKF)
f. ガウス和フィルタ、アンサンブルカルマンフィルタ、粒子フィルタ
1-2. 連続-離散型のフィルタ
(2) 連続-離散型(continuous-discrete, CD)の状態空間モデル
a. 連続的に時間発展するモデルと運動方程式
b. 伊藤の確率微分方程式
c. CD KFとCD EKF
d. CD UKF
e. コンピュータ上における数値的安定性の確保
(Lec-3) 2022年6月22日(水)9:00~12:30
1-1. 非線形フィルタを用いた人工衛星・宇宙機のGPS航法
(1) Global Positioning System (GPS)について
(2) 各国の測位衛星コンステレーション
(3) GPSを使用した位置決定(測位)
(4) 人工衛星・宇宙機のGPS航法
(5) GPS航法の状態空間モデルと航法フィルタの設計
(6) 地球周回衛星のGPS航法
(7) 月に向かう宇宙船や月周回軌道上のGPS航法
1-2. 各国の月探査計画と月測位衛星システムの動向
(1) 各国の月探査動向や米国のアルテミス計画
(2) JAXAが検討中の月測位衛星システム(Lunar Navigation Satellite System, LNSS)
[[講師からのメッセージ]]: 聴講者にはテキストをあらかじめ配布いたします.
またオンライン講義終了後も一定の期間,E-Mailで質問を受け付けます.
[受講料]: 基礎講座(2日:1日+半日×2) ¥30,000(会員, システム制御情報学会員), ¥35,000(非会員),¥15,000(学生)
本講義は、受講者総数(学生の方は0.5名に換算)が3名に満たない場合は、原則として閉講いたします。