MSASの状況と利用への期待

投稿者: | 2009-12-20

坂井丈泰
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はじめに – 航空機の航法には地上に設置されている航行援助施設が一般に用いられているが、最近は衛星航法システムの導入が世界的に進められている。衛星航法システムのひとつである米国の GPS ( Global Positioning System : 全地球測位システム ) は周知のとおり社会基盤として広く利用されており、航空路上の航空機の航法に利用するのであれば十分な測位精度が得られる。ただし、信頼性の観点からはGPS を航空機の航法に直接に利用することができず、適切な補強システムが必要とされる。このため、国際民間航空機関 ( ICAO : International Civil Aviation Organization )は、GPS 補強システムの一つとして、静止衛星を介して補強情報を伝送するSBAS ( Satellite-based Augmentation System : 静止衛星型衛星航法補強システム ) の国際標準規格を定めた。我が国では国土交通省航空局がSBAS を整備し、MSAS ( MTSAT Satellite-based Augmentation System : 運輸多目的衛星用航法補強システム ) として2007 年9 月に供用を開始した。同様のシステムを米国も WAAS ( Wide Area Augmentation System ) として整備しており、2003 年7月より航空用航行援助施設の一つとして運用している。欧州では EGNOS ( European Geostationary Overlay Service ) と呼ばれるシステムが2010 年8 月より評価運用を開始したところである。SBAS はいずれも航空用航法システムとして整備されているが、SBAS が放送する信号の仕様は公開されていることから、航空以外のユーザも特に制約なく利用できる。すでにユーザ受信機の多くは SBAS 対応となっており、SBAS 信号が放送されている環境下ではこれを自動的に捕捉・利用するのが普通である。以下、我が国が運用中の MSAS について、概要及び現在の状況を述べる。

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