Overview – 2017年5月14~15日、アジアから中東を経て欧州、アフリカ東岸にまで跨がる中国の一大開発プロジェクト「一帯一路」に関する初の国際会議が、北京で開かれた。会議自体は、約130カ国から参加者があり、習近平国家主席が同構想を支える「シルクロード基金」への1,000億元の追加出資を表明するなど注目されたが、ある意味で会議そのものよりも注目を集めたのは、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)にも参加するインドが、首脳は勿論、一切の政府関係者を送らず、会議をボイコットする強い対応を見せたことであった。
インドの反発は、「一帯一路」そのものというより、同構想の旗艦事業と位置づけられる、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)に向けられている。CPECは、パキスタン全土にまたがる大規模な経済的コネクティビティ事業として打ち出されたものの、その背後には中パ両国の安全保障上の動機がある、戦略的なプロジェクトであるとの指摘が絶えず、インドはそれが、潜在的に自国の安全保障を損ねることに対して強い警戒感を抱いている。
本稿では、そうしたCPECの安全保障上の含意と、それに関連して中印を中心に展開されている国際政治を考察する。ただし、日本ではCPEC自体の認知度があまり高くないことに鑑み、本論に入る前に、CPECの概要に触れることとしたい。
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